河のはじまりを探す旅。

河のはじまりを探しにいこうと思いました。

ひとが演劇を必要としたその瞬間の手ざわりのようなものを確かめたい、濁りのない清らかなものに手をひたしたい、と思いました。
人間の真実を見つめるさまざまな視点をその内側から生きたい、そのときどきにひとが祈りをこめて口にした言葉をたどり直したい、と思いました。

ギリシャ悲劇から数えて二千数百年。
流れの河岸で、彼方の風景を覗きこみたくなったのでした。

清新な気に満ちた「いかだ」という名を持つ劇場「RAFT」(http://raftweb.info/)の協力を得て、 2016年、旅を開始する運びとなりました。



旅のはじまりは、近代劇の父と呼ばれるイプセンの『幽霊』(1881年)の上演でした。

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アルヴィング夫人:荒井るり子
オスヴァル:加藤好昭
マンデルス:千葉恵佑(ひるくらいむノ快車)
エングストラン:今井勝法(theater 045 syndicate)
レギーネ:印田彩希子

上演台本・演出:波田野淳紘

2016年1月15日(金)~17日(日)
RAFT
http://raftweb.info/820ibsen

初日の15日が、RAFTの十周年の日でした!

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(RAFT Twitterより転載 https://twitter.com/raft_info

大切な日に、わたしたちの作品の上演を許してくださったことを、心より感謝します。

上演後、劇団員の加藤好昭くんが「河のはじまりを探そうとして、海に流されちゃった感じがするよ」と迷言を吐いていましたが、たしかに、汲めど尽きせぬ泉のように、深く深く広大な世界を有する戯曲でした。
イプセンの苛烈な筆致、強靭な精神、読むことで理解していたつもりが、実際に上演に取り組むとそれらはおそろしく巨大に、火傷するような息遣いで迫ってきました。

五人の役者と、ともに格闘できて、よかった。

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千秋楽の夜から翌日にかけて、雪が舞い散り、みるみる辺りが白に染まりました。
凍えながら、旅のはじまりを踏みだしました。



三月の公演は、別役実さんの戯曲を二作品、上演します。
『一軒の家・一本の樹・一人の息子』(1978年)と『マッチ売りの少女』(1966年)。
2016年3月4日(金)~6日(日)まで、RAFTにて。

学生時代、はじめて別役さんの戯曲を読んで以来、その作品世界のとりことなりました。
何気ないやり取りのさなか、突然に足場が外され、奈落につき落とされるような滑落感を得るその読書体験は、演劇の、慄然とするほど豊かな、拓けた世界を眼前に展開させてくれるものでした。

別役さんの戯曲を読むたび、宇宙にぽつんとあることの寂しさのようなものを感じます。
時に滑稽に、時に酷薄なまでに存在の揺らぎをつきつける劇構造と、それを支えるせりふと格闘することで、誰もが異なる文法に則り存在するわたしたちの、根源的な悲しみに触れることができたら、と考えています。



終わることのない、長い旅です。
演劇を創作する集団としても、一段深い挑戦の場に分け入りたいと思います。

わたしたちの旅を、どうか、ともにお見守りいただけたら幸いです。

劇団820製作所
波田野淳紘

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